小説の書き方

【原稿の校正】校正のやり方とよく使われる校正記号14選

校正で原稿の最終チェック!

出版するための原稿に誤植や不備がないか最終チェックするのが「校正」です。

基本的には作者以外の校正者が校正をおこない、その原稿を作者が確認します。

校正ではJIS(日本産業規格)によって定められた「校正記号」を使用して原稿に修正指示を書き込むので、校正された原稿を受け取る作者も校正記号を把握しておく必要があります。 当記事では校正で確認すべきポイントと、校正記号について解説します。

助手ちゃん

校正記号は代表的なものをピックアップしているんですよね?

レイボン

うん。校正記号は実際に僕が校正作業を経験して必要性が高いと感じたものをまとめたよ。

校正の基本ルール

まずは校正の基本的なルールを知り、校正原稿がどういうものかを把握しておきましょう。

赤字で原稿に書き込む

黒字で書かれた原稿に黒字で修正指示を書いても、それを確認する人が見落としてしまう可能性があります。そのため、修正指示が目立つよう赤字でわかりやすく書きます。

原稿自体が赤字で書いてある場合は、赤色以外の目立つ色を使いましょう。

修正指示は余白に書き込む

修正指示は文字の上には書かずに近くの余白部分に書きます。

文章の行間に無理やり書くと文字が小さくなって見えにくくなるので、修正箇所から修正指示を書く余白の部分まで「引き出し線」によって赤い線を引っ張り、余白部分に大きく修正指示を書きます。

また、修正テープや修正液で元の字を隠してしまうと著者が修正前の字を確認できなくなるので、できるだけそういったものは使わないようにしましょう。

校正の基本ルールの例。

誰が見てもわかるように書く

校正による修正指示は誰が見てもわかるように書くべきです。

そのために統一規格として「JIS Z 8208:2007改正 印刷校正記号一覧」が定められています。

修正指示の書き方はJISに従い、勝手に自分独自のやり方で書かないようにしましょう。

また、原稿は基本的に漢字とひらがなで書かれるので、わかりやすいよう修正指示はカタカナで書きます。

校正で確認すべきポイント

校正で確認すべき内容は、著者が推敲で確認すべきこととも一部共通しています。推敲時に見落としている可能性もあるので、校正でしっかり修正しましょう。

誤字脱字

基本的な誤字脱字を修正します。

  • 入力ミス
  • 漢字の変換ミス・同音異義語の間違い
  • 漢字の送り仮名の間違い
  • 「てにをは」

最低限の文章作法

文章における最低限のルールが守られているか確認します。

文章のルールについての詳細はこちらの記事を参考にしてください。

小説を書く上での最低限のルール
【小説の書き方】小説執筆の基本ルール7つ ~ セリフのかっこや感嘆符など文章作法を解説小説執筆における7つの基本ルールを解説します。...

文章の体裁

行頭の字下げなど文章の体裁を整えたり、書体など文字の体裁を整えたりします。

  • 行頭の位置
  • フォントの種類や大きさの統一
  • 全角半角の統一
  • アルファベットの大文字小文字

表記ゆれ

表記ゆれとは、同音の語句、同義の語句に異なる文字で表記されることです。

複数の表記方法があってどれも間違いではなかったとしても、一つの原稿内では同じ表記に統一すべきです。

  • 同じ単語での漢字・ひらがな・カタカナの表記統一
  • 数字の表記(アラビア数字と漢数字)
  • 外来語の表記

外来語は元々は英語などの外国語を日本語に置き換えて表記したものなので、複数の異なる表記が使われていることがよくあります。

  • コンピュータ、コンピュータ
  • エンターテイメント、エンターテイメント

意味的におかしな部分

文章の意味がおかしい部分があれば修正します。

推敲時に見るような内容ですが、校正でも確認します。

  • 意味が理解できない文章がある
  • 同じ意味の言葉が連続している
  • 難解な専門用語が説明なしに使われている
修正すべき文の例

 もしかして、この植物はアレロパシーがあったのか。コンパニオンプランツとは知らず抜いてしまったぞ。ああ、なんてことだ。頭痛頭が痛い

例では「アレロパシー」や「コンパニオンプランツ」など説明なしに専門用語が登場しています。また、「頭痛」と「頭が痛い」は同じ意味なので片方は削るべきです。

よく使われる校正記号14選

本の出版が決まると、著者は編集者とやり取りをおこない、校正記号を使った修正指示が書きこまれた原稿が返ってきます。個人的に外部の人に校正依頼を出しても同様です。

校正者が校正記号を知っておく必要があるのは当然ですが、著者も校正記号を把握しておかなければ、返ってきた原稿の修正指示を理解することができません。

本を出版するにあたって「校正記号」は必須の知識となるので、最低限の校正記号は覚えておきましょう。

字の修正

1字だけ修正する

修正する文字に斜線を書くか丸で囲み、引き出し線を伸ばした先に修正する文字を書きます。

1字を修正する校正記号
1字を修正する校正記号を使った例

2字以上を修正する

修正する文字列の最初と最後に斜線を書き、間を線でつなぎます。そこから引き出し線を伸ばし、修正する文字を書きます。

2字以上を修正する校正記号
2字以上を修正する校正記号を使った例

削除

削除し、間を詰める

1字の場合は削除する文字に斜線を書き、2字以上の場合は削除する文字列の最初と最後に斜線を書いて間を線でつなぎ、それぞれそこから引き出し線を伸ばした先に「トル」または「トルツメ」と書きます。

削除して間を詰める校正記号
削除して間を詰める校正記号を使った例

削除し、間を空けておく

間を詰める場合と同様に引き出し線を伸ばし、その先に「トルアキ」または「トルママ」と書きます。

そうした場合は消した文字の部分がそのまま空白にしておく意味になります。

削除してそのまま間を空ける校正記号
削除してそのまま間を空ける校正記号を使った例

文字や記号の挿入

文字や記号を挿入する箇所に「」を書き、その先端から引き出し線を伸ばした先に挿入する文字を書きます。挿入する文字は引き出し線と途中で枝分かれさせた線とで挟みます。

挿入箇所には、横書きの場合は「」、縦書きの場合は「」を書きます。

文字を挿入する校正記号
文字を挿入する校正記号を使った例

文字の入れ替え

連続する文字を入れ替える

文字の前後を入れ替える場合は、「S」のような形の線で前後それぞれの文字をくるみます。

前後の文字を入れ替える校正記号
前後の文字を入れ替える校正記号を使った例

離れた文字を入れ替える

入れ替える文字が離れている場合は、それぞれの文字を丸で囲み、双方向矢印で結びます。

離れた文字を入れ替える校正記号
離れた文字を入れ替える校正記号を使った例

修正の取りやめ

引き出し線を二重線で消して修正指示に斜線を引き、元の文字の近くに「イキ」と書きます。

修正を取りやめる校正記号
修正を取りやめる校正記号を使った例

ルビ

ルビを振る文字の上に線を引き、そこから引き出し線を伸ばしてふりがなを書き、ふりがなの上に円弧を書きます。

ルビを入れる校正記号
ルビを入れる校正記号を使った例

文字書式の変更

文字サイズの変更する

サイズを変更する文字の上に大カッコのような線を書き、その上に「○ポ」と書きます。「○」の部分に文字サイズのポイント数を書きます。

文字のサイズを変更する校正記号
文字サイズを変更する校正記号を使った例

書体を変更する

書体を変更したい文字が1字の場合は丸で囲み、2字以上の場合は上に大カッコのような線を書き、その上に指定する書体を書きます。あるいは引き出し線を伸ばした先に書きます。

書体の指定は、明朝体は丸で囲った「明」を書き、ゴシック体は「ゴチ」と書きます。

書体を変更する校正記号
例(明朝体)
書体を明朝体に変更する校正記号を使った例
例(ゴシック体)
書体をゴシック体に変更する校正記号を使った例

大文字・小文字の変更

大文字に直す

大文字にする字の下に三本線「」を書きます。

あるいは修正箇所を示して丸で囲った「大」または「cap」と書いても構いません。

大文字に変更する校正記号
例1
大文字に変更する校正記号の例1
例2

小文字に直す

1字の場合は丸で囲み、2字以上の場合は上に大カッコのような線を書き、引き出し線を伸ばした先に丸で囲った「小」を書きます。

小文字に変更する校正記号
小文字に変更する校正記号を使った例

下付き・上付き文字

下付き文字に直す

文字を下付き文字に直す場合、その文字に「」をかぶせて書きます。

丸で囲った「下ツキ」という補足を入れるとわかりやすくなります。

文字を下付きにする校正記号
文字を下付きにする校正記号を使った例

上付き文字に直す

文字を上付き文字に直す場合、その文字に「」をかぶせて書きます。

丸で囲った「上ツキ」という補足を入れるとわかりやすくなります。

文字を上付きにする校正記号
文字を上付きにする校正記号を使った例

字間調整

空いている字間をベタ組にする

ベタ組とは

字間を0にして文字の間が空いていない状態の文字組にすること。

要するに、通常の文字間隔がベタ組です。

文字と文字の間に入った不要なスペースを詰めたい場合、その文字間の上に「」を書くか、該当部分の文の上に大カッコのような線を書き、その上に「ベタ」と書きます。

文字間隔をベタ組にする校正記号
ベタ組にする校正記号を使った例。

改行

改行する

改行して段落を変えたい場合、その部分に「Z」のような直角につなげた線を書きます。

段落を変えるので、行頭を字下げする文章では改行した文は字下げします。

改行する校正記号
改行する校正記号を使った例

改行を取り消し、行を続ける

改行を取り消して同じ行で文をつなげたい場合、つなげる行末と行頭を曲線でつなぎます。

改行を取り消して文をつなげる校正記号
改行を取り消して文をつなげる校正記号を使った例

文字送り

文の途中から文字を次の行または前の行に送りたい場合、その部分にひっかけるように直角の線を書きます。

次の行に送る場合は「」、前の行に送る場合は「」の向きで書きます。

文字送りをする校正記号
文字送りをする校正記号

指定の位置まで文字・行などを移動

文字を寄せたい位置に縦線を書き、そこから寄せる文字の端まで横線を引きます。さらに寄せる文字の範囲がわかるよう、その反対側に帽子のような直角の線を書きます。

文字の位置を移動する校正記号
文字位置を移動する校正記号を使った例

句読点、中黒点などの記号

記号は小さく見落とす可能性があるので、線で囲ったりして目立つようにします。

句読点「、」「。」の場合は「」を書き、その内側に句読点を入れます。

中黒点「・」の場合は「」を書き、その中に中黒点を入れます。

読点「、」、句点「。」、カンマ「,」、ピリオド「.」は非常に似ているので、その形がはっきりとわかるように書きましょう。

句読点などの記号の表示方法
校正で句読点などの記号を修正した例

例のように、句読点の場合は引き出し線を使わない方法もあります。

紛らわしい文字・記号の表記

紛らわしい文字や記号は、それが何であるかわかるよう識別を丸で囲って書きます。

校正における紛らわしい文字や記号の表示方法

縦書きの場合

縦書きの場合は、横書きの修正指示を時計回りに90度回転させた形にします。

横書きで文字の上に書くものは縦書きでは右に書き、横書きで文字の下に書くものは縦書きでは左に書きます。

まとめ

この記事では校正について以下の内容で解説しました。

校正の基本ルール
  • 赤字で原稿に書き込む
  • 修正指示は余白に書き込む
  • 誰が見てもわかるように書く
校正で確認すべきポイント
  • 誤字脱字
  • 最低限の文章作法
  • 文章の体裁
  • 表記ゆれ
  • 意味的におかしな部分
よく使われる校正記号14選
字の修正文字の入れ替え大文字・小文字の変更
削除文字や記号の挿入指定の位置まで文字・行などを移動
ルビ文字書式の変更句読点、中黒点などの記号
改行下付き・上付き文字紛らわしい文字・記号の表記
字間調整修正の取りやめ

ここに記載した校正記号を把握して、校正作業や校正原稿の確認をできるようにしましょう。

もしわからない校正記号がある場合は「JIS Z 8208:2007改正 印刷校正記号一覧」を確認しましょう。Google検索で見ることができます。

助手ちゃん

覚えるのが苦手で校正記号が覚えられません。

レイボン

必要なときにこの記事やJISで逐一確認していれば自然と覚えるよ。