小説を書く場合、最初に決めるべき要素の一つとして「ジャンル」があります。
みなさんは小説を書く際、どのジャンルで書くか迷ったことはありませんか?
たいていの場合は書く内容によってジャンルも自然と決まりますが、内容によってはいくつかのジャンルで書くことが可能な場合もあります。
当記事では小説における各ジャンルの特徴を、執筆する観点から解説します。
書こうとしている小説のジャンルを決める際の参考にしてください。
- 書こうとする小説のジャンルを決めきれない
- 自分に合った小説ジャンルを知りたい
小説のジャンルってすごく多くないですか?
多いね。ここでは小説投稿サイトで選択できるものを中心にメジャーなものを解説するよ。
ジャンルを決める目的
ジャンルを決める目的はいくつかあります。
- 小説の方向性がブレることを防ぐ
- ジャンルを明確にすることで読者が安心して読める
- 小説投稿サイトでは最初に決めなければ本文を書き始めることができない
提示しているジャンルと物語の内容が一致していることは重要です。
例えば「ミステリーを読みたいと思って読んでいたのに、実は恋愛だった」なんてことになれば、その小説が面白かったとしてもガッカリされる可能性が高いです。
読者の期待を裏切らないためにも、ジャンルを決めてそれを明示しましょう。
各ジャンルの特徴
ファンタジー小説
ファンタジー小説は、仮想の設定のもとに物語の世界を構築した小説です。
「ハイ・ファンタジー」と「ロー・ファンタジー」に分けられます。
読者をワクワクさせ、楽しませることが期待されるジャンルです。
ハイ・ファンタジー(異世界ファンタジー)
架空の世界を舞台としていて、魔法、架空の生物(ドラゴン、フェンリルなど)、その世界特有の要素など、設定の自由度が非常に高いジャンルです。
基本的に何を書いてもOKですが、一貫性は必要です。一度設定したことと矛盾することを書かないように気をつける必要があります。
Web小説で人気のある「異世界転移」「異世界転生」などはこのジャンルになります。
自分の自由な空想を小説にしたい場合は、ハイ・ファンタジーとして書くのがよいでしょう。
ロー・ファンタジー(現代ファンタジー)
現実世界を舞台として、そこに魔法など架空の要素を加えたものがこのジャンルになります。
「学園異能バトルもの」などがこのジャンルに該当し、万人になじみ深い学校などを舞台にして、特殊能力でバトルするような物語を描くことができます。
ただし現実世界が舞台なので、例えば法律がどう影響しているか、警察は動かないのかなど、現実世界と架空の要素の関係性に説得力を持たせる必要があります。
Web小説だと異世界転生もののハイ・ファンタジーがとても多いですね。
最近だとダンジョンで配信してバズる系のロー・ファンタジーが増えているよ。
現代ドラマ小説
現実世界を舞台としたものが現代ドラマになります。
ただし、恋愛を中心に取り扱うものは「恋愛」、謎解きを中心に取り扱うものは「ミステリー」に分類されます。
現代ドラマで取り扱うテーマとしては、例えば「主人公の伝記」、「スポーツで大会優勝を目指す」、「社会問題に立ち向かう物語」、「日常の面白い出来事」など幅広いものが該当します。
現実世界を舞台にしていてジャンル設定に迷ったら「現代ドラマ」にしましょう。
青春小説
現代ドラマの中でも、とりわけ10代~20代の若者に焦点を当てたものを「青春小説」とする場合もあります。
10代~20代の若者は強く共感でき、大人は懐かしさや叶えられなかった夢に想いを馳せることができます。
ヒューマンドラマ
現代ドラマの中でも、特に人間関係に焦点を当てたジャンルを「ヒューマンドラマ」とする場合もあります。友情や家族愛などの物語が該当します。
恋愛小説
登場人物の恋愛を主題とした小説が恋愛小説です。
需要は非常に高く、特に女性人気が高いジャンルです。
「恋愛」は多くの人から共感を得やすく、読者の感情も揺さぶりやすいので、他ジャンルでもよく恋愛要素を入れられます。
登場人物の心情を深く描写する必要があるので、書くのであれば一人称で書くことをオススメします。
最近の「小説家になろう」では悪役令嬢に転生する「異世界恋愛」が多いですね。
以前は異世界ファンタジーが多かったけど、ランキングから切り離されて異世界恋愛の短編が主流になったね。
コメディ小説
人を笑わせることを主な目的としたジャンルです。
恋愛やコメディを単独で描いた作品よりも、「ラブコメ」として恋愛要素とコメディ要素をあわせて描く作品のほうが多く見られます。
ラブコメ
恋愛とコメディの二つを主軸に置いた人気の高いジャンルです。
登場人物同士がボケとツッコミによる軽妙な掛け合いをするものが多く、ライトノベルに多く見られます。
ラブコメは軽い気持ちで読めるので私も好きです。
書く側は笑える掛け合いをたくさん書く必要があるから、笑いのセンスが必要になるね。意外と難易度が高いジャンルだよ。
SF小説
SFとはScience Fiction(サイエンス・フィクション)の略です。
現実には起こっていないことが起こったと仮定して、それについて科学知識に基づき論理的に考察し、物語を展開させる小説がSF小説です。
科学に基づいて物語が展開するので堅いイメージがありますが、以下の例に示すように、硬派なものからそうでないものまで幅広く存在します。
- 現実世界の要素を少しだけ変えて、「この要素がもしこうなっていたら」という科学的考察を発展させていくリアリティーのある物語。
- 現代では考えられないほど技術が発展した世界で、人々やロボットの暮らしを描いた近未来的な物語。
- 地球から遠く離れた宇宙で自由度の高い世界が広がっているファンタジー的な物語。
SF小説を書くには、書こうとするテーマに関する知識と、前提と仮定を元に論理的に考察する力が必要です。
ミステリー小説
いわゆる推理小説です。
発生した事件を解決に導くための合理的な謎解きを主題としたものが、このミステリーというジャンルです。
主に「誰が犯人か」「どんな手口か」「動機は何か」を解明するためにストーリーが展開されます。
非常に人気の高いジャンルで、サブジャンルや専門用語も多数あります。
探偵や警察を主人公とすることが主流ですが、一般人が主人公として謎解きしている作品も多く見られます。
ただし、下記の理由により執筆難易度は他ジャンルより高いです。
- 犯罪が関係することが多いので、警察や解剖学に関する知識が必要となる。
- 正確な知識が必要となるので、舞台や設定の関連分野について詳細に調査しなければならない。
- 作品内にわずかでも矛盾があれば謎解きの妨げになる。
主人公と一緒に謎解きをする読者も多いので、間違った情報や矛盾する内容を書いてしまうと、読者に総ツッコミされかねません。
もしトリックの基幹に関わる部分に間違いや矛盾があると、その作品は根底から台無しになってしまいます。
ミステリーを書く場合には、矛盾がないよう神経をとがらせて書く必要があります。
先生、私を名探偵にして長編ミステリーを書いてもいいですよ。
名探偵の活躍を描くなら短編のほうが相性はいいよ。長編でダラダラと謎解きをやっていては名探偵とは言いがたいからね。
ホラー小説
読者に恐怖を抱かせることを目的としたジャンルです。
テーマとしては、幽霊、妖怪、ゾンビ、吸血鬼、宇宙人、呪いや祟りなど、さまざまなものがあります。
テーマによっては謎解き要素が入っていることもあります。
ホラー小説を書く場合はスリリングに描いて読者を惹きつけましょう。
歴史・時代小説
「歴史小説」と「時代小説」は言葉が似ていますが、史実に忠実かどうかという点で明確な違いがあります。
歴史小説
歴史小説は歴史上で実在する時代を舞台とし、実在した人物を登場人物として使い、史実にのっとったストーリー展開をするものです。
史実ではわからない細かい部分を空想し、物語として展開していきます。
時代小説
時代小説は実在する時代を舞台とし、史実とは異なるストーリー展開をするものです。
登場人物は基本的に架空の人物を登場させますが、実在した歴史上の人物を登場させて史実と異なる行動をさせる場合もあります。
時代設定だけを利用してオリジナルの物語を描きたい場合はこのジャンルになります。
その他
ここまでに主要なジャンルを紹介しましたが、細かく見ると、それ以外にも童話、ノンフィクション小説、官能小説など、さまざまなジャンルが存在します。
ジャンル以外の分類
純文学と大衆文学の区別
小説は「芸術性」と「娯楽性」のどちらを重視するかによって二つに大別できます。
有名な文学賞として芥川賞と直木賞がありますが、芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学を対象とした賞となっています。
純文学
純文学とは、「芸術性」に重きを置いた小説の総称です。
明治時代の作家である北村透谷によって「学問のための文章でなく美的形成に重点を置いた文学作品」と定義されています。
大衆文学
純文学に対し、「娯楽性」に重きを置いた小説の総称です。
引き込まれるようなストーリー、個性的なキャラクター、共感できる心情描写など、いかに読者を楽しませるかを考えて書かれた内容重視の小説を指します。
大衆文学は大衆小説、娯楽小説などさまざまな呼ばれ方をします。
純文学の「芸術性」って何ですか?
難しい質問だね。定義されていないからはっきりコレとは言えないけど、美しい文章表現、巧みな情景描写、巧妙なメタファー(比喩)、深みのあるアレゴリー(寓意性)だと僕は思っているよ。
ライトノベルというくくり
「ライトノベル」はストーリーのジャンルではなく小説の形態としてのジャンルです。
よく「ラノベ」と略されます。
明確な定義はまだありませんが、物語の場面やキャラクターのイラストが描かれた挿絵ページが文章ページの間に挟まっていることが特徴的です。
中高生などの若い層をメインターゲットとした小説で、会話文が多いという特徴があります。
たいていは表紙もキャラクターのイラストが描かれており、イラスト買いする人も多数います。
ライト文芸(キャラクター小説)
ライトノベルから派生したジャンルで、ライトノベルと同じく表紙にイラストを採用している作品が多いのが特徴です。
キャラクター小説と呼ばれるだけあって、キャラクターを魅力的に描くことが重要です。といっても、描写やストーリーももちろん重要ですが。
対象年齢はライトノベルよりも高く、大学生や社会人、特に女性がメインターゲットとして想定されています。
一次創作と二次創作
「一次創作」と「二次創作」の違いは以下のとおりです。
- 一次創作:元となる作品(原作)が存在しないオリジナルの作品
- 二次創作:原作となる作品の舞台やキャラクターを利用し、原作者以外が独自に創作した作品
同人誌などの二次創作作品を原作者の許諾なく販売すると著作権法違反になる可能性があります。黙認されることが多いものの、著作権者が刑事告訴や民事訴訟を起こすリスクがあることは忘れてはいけません。
二次創作作品を書く場合、二次創作に関するライセンスやガイドラインがあればそれらを確認しておきましょう。
ジャンルのドーピングをしよう
恋愛とミステリーの要素をひとつまみ
どのようなジャンルの小説を書くにしても、軽くミステリー要素と恋愛要素を入れると、より読者を惹きつけられる小説を書くことができます。
ミステリー要素はプロテイン
ミステリー要素は持久力を高めるプロテインのようなもので、未解決の謎があると、話の続きが気になる心理が働いて途中で脱落する人を減らすことができます。
べつに殺人事件のような大事件を起こす必要はありません。読者の「理由が気になる」「続きが気になる」という心理を誘うことができればいいので、その謎は日常の些細なことでも構いません。
恋愛要素は媚薬
恋愛要素は多くの人を惹きつける媚薬のような効果があります。
恋愛話が好きな人は多く、メインとなる物語に興味がなくても登場人物の恋愛の行方は気になるという人が興味を持ってくれる可能性があります。
可能であれば恋愛要素を入れて需要の幅を広げましょう。
まとめ
当記事では執筆する観点から、以下に示す小説の主要なジャンルについて解説しました。
- ファンタジー小説
- 現代ドラマ小説
- 恋愛小説
- コメディ小説
- SF小説
- ミステリー小説
- ホラー小説
- 歴史・時代小説
- ジャンル以外の分類
どんなジャンルの小説を書こうか迷った場合や、自分の書く小説がどのジャンルに該当するかわからない場合には当記事を参考にしてください。
複数のジャンルを組み合わせた作品もありますよね?
ミステリーとホラー、ファンタジーとSFといった組み合わせは多いけど、珍しい組み合わせに挑戦するのも面白いと思うよ。