日本では「文章は『起承転結』を意識して書きましょう」と教えられるのが一般的です。
しかし、これは海外では一般的ではありません。
論文などの論理性が求められる文章では「序論→本論→結論」というパラグラフ・ライティングが使われ、映画脚本などのストーリー性が求められるものでは「設定→対立→解決」という三幕構成が使われるのが一般的です。
この三幕構成は、映画だけでなく小説のプロットを考える際にも非常に有効です。
当記事ではこの三幕構成についてわかりやすく解説するので、ぜひ小説のプロットを考える際の参考にしてください。
- 三幕構成について知りたい
- 三幕構成を使ってプロットを作りたい
- 盛り上がるストーリーを考えたい
三幕構成の特徴
三幕構成とは、ストーリーを第一幕(設定)、第二幕(対立)、第三幕(解決)という三幕に分けられる脚本の構成です。
三幕構成は1979年にシド・フィールドによって理論化されました。
特徴としては以下の点が挙げられます。
- 設定→対立→解決の3つの幕からなる。
- 3つの幕の比は1:2:1
- 第一幕と第二幕の終わりにターニングポイント(転換点)がある
映画の脚本は一般的に三幕構成になっています。
2時間という短い時間の中で物語を動かし視聴者を楽しませる映画の数々を想像すれば、この三幕構成がいかに優れた枠組かわかると思います。
これを小説の物語作りに活かさない手はありません。
それでは、次項で三幕構成の構成要素について詳しく解説していきます。
三幕構成の流れ
第一幕 - セットアップ
主人公が誰で、どういう状況にあり、何をする物語なのかを説明します。
この段階で主人公以外のメインキャラクターも登場するのが望ましいです。
- 主人公は誰か
- 主人公が置かれている状況、世界観
- 主人公の目的・行動原理
- メインキャラクター登場または登場の示唆
説明といっても「主人公は○○です。こういう状況なので、彼は○○します。」と設定の説明を垂れ流すのではなく、具体的なエピソードで読者に理解させるべきです。
俺は刑事だ。非番だったが、緊急の応援要請があった。指名手配犯の海外逃亡を総力をあげて阻止しなければならない。
真っ昼間の自室。俺は缶ビールのフタを開け、それを口に運ぶ。さあ一口目というところで着信が入った。
「うっす。お疲れ様です。え、緊急の応援要請? 俺、今日は非番なんすけど」
そこで怒鳴られた俺は思わずスマホを耳から離した。どうやら指名手配犯が海外逃亡を企てているらしい。その緊急時に俺のダルそうな態度。上司である警部が怒るのも無理はない。
このセットアップは、小説では最初の数ページ、映画では冒頭10分に相当する部分です。
作品において非常に重要な部分なので、ここでしっかりと読者の興味を引き、期待感を高める必要があります。
第一幕 - キッカケとなる出来事
第一幕の最後に起こる1回目のターニングポイントのキッカケとなる出来事が起きます。
バトルものならば最大のライバルと出会い、恋愛ものならば運命の人と出会うといった感じで、ここから物語が動きはじめます。
その出来事によって主人公の日常に変化がもたらされ、最終的に何を解決しなければならないのかが明確になります。
セントラル・クエスチョン
主人公が解決すべき最終的な目標です。
第一幕の「キッカケとなる出来事」によってそれが明確になり、第三幕の「クライマックス」で、それが達成できるかどうかが描かれることになります。
第一幕 - ターニングポイント①
第一幕の終わりに大きな出来事が起きます。
主人公の人生や日常が完全に崩され、生じた問題を解決しなければ元に戻れない、前に進めないという状況に陥ります。
主人公が最終的に解決すべき問題を再認識し、ストーリーが本格的に動きだします。
主人公はここまで受け身で動いていたとしても、ここからは自分の人生が賭かっているので能動的に動くようになります。
- クライマックスに関わってくる大きな出来事
- 主人公の最終的な解決目標
- 主人公の決意
第二幕 - 第二幕前半
ここから主人公が目的を達成するために本格的に動きだします。
たいていの場合は目標に向かって順調に進み、次々と目の前の困難を解決していきます。
ピンチ①
第二幕前半の中間地点で重要な出来事が起きます。ピンチ①はこの出来事を指します。
ターニングポイント①からミッドポイントまでのストーリーをつなぐ、第二幕前半の中心となるイベントです。
第二幕 - ミッドポイント
全体および第二幕の中間地点で非常に重要な出来事が起こり、ここから主人公の置かれる状況が一気に悪くなっていきます。
これまで通りの行動では解決できない問題に衝突することで、主人公は行動方針を変えたり、まったく別の道を進む決断をしたりするという場面です。
映画の場合、その作品の見せ場(ド派手なシーンなど)をここに設置する場合もあります。
- 立ちはだかる最大の壁
- 主人公の意志の変化
第二幕 - 第二幕後半
引き続き主人公は目標に向かって進みますが、順調だった前半とは一転して次々と困難が降りかかり、状況がどんどん悪くなって最悪の状態へと向かいます。
主人公に仲間がいれば同じように状況が悪化していきます。
ピンチ②
第二幕後半の中間地点で重要な出来事が起きます。ピンチ②はこの出来事を指します。
ミッドポイントからターニングポイント②までのストーリーをつなぐ、第二幕後半の中心となるイベントです。
第二幕 - ターニングポイント②
主人公が最悪の状態に陥り、最後の問題を解決するための決断を強いられます。
最悪の状況に陥った主人公は、ここから最終目標(敵)に強く立ち向かっていきます。
主人公のこれまでの努力が実を結ぶ兆しが見えたり、何かがキッカケで精神的に成長したり、最大の敵を倒す光明を見つけたりすることになります。
- 主人公は最悪の状態
- 主人公の変化、成長、決断
- 決戦の地への移動
サブプロット
サブプロットはメインプロットとは別のストーリーラインです。
たとえば主人公とヒロインの恋愛のように、物語の本筋とは異なるもう一つの物語のことです。
サブプロットとメインプロットの関係性は薄い場合もあれば、濃密に絡み合っている場合もあります。
サブプロットも三幕構成で作り、第二幕の前半までには始まります。
第三幕 - クライマックス
クライマックスはストーリーの上の盛り上がりが最大となる部分で、解決すべき最終的な目標(セントラル・クエスチョン)がどうなったか明らかになります。
主人公は弱点を克服したり成長したりしたことで、最大の問題を解決することができ、日常を取り戻したり新たな日常を手に入れたりします。
メインプロット、サブプロットの問題がすべて解決し、伏線もすべて回収されます。
- 最大の問題を解決
- 最終的な目標の結果
- すべての伏線を回収
第三幕 - エンディング
物語の行きつく先です。
主人公が日常を取り戻したのであれば日常に戻っていく姿、新たな日常を手に入れたのであれば勇ましく進んでいく姿、バトルものであれば勝利の宴、恋愛ものであれば結婚式などを書き、読者に物語の余韻を与えて満ち足りた気分にさせましょう。
三幕構成のプロット例
刑事である主人公がテロ組織に立ち向かう物語を例にプロットを書いてみました。
三幕構成によるプロットがどんなものかの参考にしてください。
第一幕
セットアップ | 主人公は刑事。事件解決のために日々奔走している。 非番のある日、緊急の応援要請が来て指名手配犯を追うことになる。 |
キッカケとなる出来事 | 指名手配犯が空港で人質を取って警察を威嚇する。 指名手配犯とテロ組織がつながっていることがわかる。 (セントラル・クエスチョン:動きだしたテロ組織のテロを阻止し、捕まえることができるか) |
ターニングポイント① | 指名手配犯を逮捕したが、パトカーが爆発して指名手配犯が死ぬ。 テロ組織が本格的に動き出し、対策本部が設置され、主人公も参加する。 |
第二幕
第二幕前半 | テロ組織の捜査開始。少しずつアジトの場所に近づいていく。 (ピンチ①:テロ組織が爆弾設置を予告。捕まっている組織のリーダーの釈放を要求) テロ組織の要求はのまず、設置された爆弾を発見して解除していく。 |
ミッドポイント | テロ組織メンバーの襲撃により組織のリーダーが脱獄する。 |
第二幕後半 | 各地で爆発事件が発生し、事態収拾のため奔走する。 (ピンチ②:30周年イベント中の大型デパートでテロ組織が立てこもり) デパートに向かう主人公は道中でテロ組織のメンバーに襲われ怪我をする。 |
ターニングポイント② | デパートに主人公の娘が行っていることが判明する。娘を守るためにも主人公は単独でデパートに侵入する。 |
サブプロット
仕事を最優先にして娘との関係が悪化してしまうが、最終的には事件に巻き込まれた娘を助けて娘の理解を得られて仲直りする。
第三幕
クライマックス | テロ組織の裏をついて人質を解放し、組織と対決。メンバーやリーダーと激しい戦闘。 最後には組織のリーダーの逮捕に成功する。 |
エンディング | 今度こそ約束を守って娘と遊びに行く。 しかし出先で再び上司から緊急の呼び出しが来る。 事件を通して娘から仕事に対する理解が得られたので、今回は応援の言葉とともに送り出してくれた。 |
プロット例の物語は意外とおもしろそうになりましたね。
即興で考えた物語だけど、三幕構成で作ると映画みたいな起伏を作れるね。
まとめ
この記事では盛り上がるストーリー作りに有効な「三幕構成」について、以下の内容で解説しました。
- 三幕構成の特徴
- 三幕構成の流れ(第一幕~第三幕)
- 三幕構成のプロット例
物語の作り方は自由ですが、もし自分の書いた作品がイマイチに感じられたり、人から良い評価を得られなかったりしたら、次は試しに三幕構成に基づいてストーリーを考えてみましょう!
一般的に映画の脚本に使われる三幕構成ですが、それを意識して作った物語は、たとえ小説であっても人を惹きつけること間違いなしです。
小説のプロットを考える際には、ぜひ役に立ててください。