小説はどんなにキャラクターが魅力的でも、ストーリーがおもしろくなければ駄作になってしまいます。
キャラクターの魅力を引き出すにも具体的なエピソードが必要で、それはつまり、ストーリーが駄目だとキャラクターも腐ってしまうということです。
でもおもしろいストーリーを考えるのって難しいですよね?
ただ空想や妄想を垂れ流しても、おもしろいストーリーは作れませんし、読者を楽しませることもできません。
だったら、おもしろいストーリーはどうやって作ればいいの?
この記事では、その方法を具体例とともに解説します。
- ストーリー作りの基本的な考え方を学びたい
- 考えたストーリーが単調で退屈になるのを直したい
- おもしろいストーリーを考えたい
おもしろいストーリーの条件
おもしろいストーリーの条件とは何か。
結論から言うと『起伏をつけろ!』です。
何の起伏かというと、主人公の置かれた状況や主人公の感情の起伏です。
要するに、主人公を不幸状態にしたり幸福状態にしたりして、それを繰り返すということです。
物語を通して起伏が多いほど退屈しませんし、その起伏が大きいほどおもしろくなります。
また、物語のスタート地点は主人公を起伏の低い位置に設定し、ゴールを高い位置に設定します。
作品が進むにつれて主人公は達成すべき最終目標に近づいていくことになりますが、そのなかで主人公が様々な困難に直面し、それを乗り越えていくという起伏を作るのです。
また、その起伏は物語の終盤に行くにつれて大きくなるのが好ましく、特に最後は最大の起伏になるようにすべきです。
図にもあるように、序盤は起伏の間隔を短くすることが望ましいです。
そうやって「主人公が困難に陥ってもそれを克服する」という物語の流れを読者に見せることで、そのあとのストーリーに期待を持ってもらえます。
章立てする場合、章の立て方にもよりますが、全章を通してだけでなく一つの章内でもできるだけ上記のような起伏になるように物語を組み立てることが理想です。
ほのぼの日常系だと起伏はいらないんじゃないですか?
日常系には日常系の起伏があるんだよ。最初から最後までボーっとしているだけで終わる小説なんてないでしょ。
起伏のある物語の具体例と解説
ここからは私の作品を例に挙げて、起伏がどのようなものなのかを具体的に説明していきます。
まずは例に挙げる作品を紹介します。
作品はこちら↓
『国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~』/「日和崎よしな」名義(リンクはカクヨム作品ページ)
以下、『コクマヨ』と略します。
内容は、科学技術の発展した国から国外追放された科学者ベント・イニオンが、技術の遅れた追放先の国で、独自開発した武器を使って無双するというお話です。
最終的には追放した国との戦争や、追放を仕組んだ黒幕と決着をつけます。
ここでは全3章のうちの第1章を取り上げます。(自分の開発拠点を盤石にして所属ギルドを敵の襲撃から守るところまで)
なお、これ以降は『コクマヨ』のネタバレが多く含まれるのでご注意ください。
先に『コクマヨ』を読んだほうがいいですか?
どちらでもOK。この記事を読んでから『コクマヨ』を読んでもおもしろいと思うよ。
最序盤は起伏一セットで作品紹介
先ほど私は「序盤は起伏の間隔を短くすることが望ましい」と言いましたが、特に最初の一話には「初期状態→不幸状態→幸福状態」の一つの起伏をまるっと入れてしまったほうがいいです。
そうすることで、「この作品はこうやって困難を乗り越えていく作品ですよ」と紹介するのです。
第一話に起伏一セットを入れ込むことが難しい場合は、本編とは切り離したプロローグとして話を作りましょう。
プロローグは時系列を無視して本編の見所を差し込んでも構いません。
特にWeb小説だと、とにかく最初に読者の心をつかまなければ読者はすぐに離れてしまいます。
『コクマヨ』の場合、第一話から重苦しい会議の話になっているので、プロローグで第一話より少し先の場面を描いています。
そのプロローグでは、主人公のベントが国から追放されて山中を歩いていたところを盗賊たちに襲われ、それを撃退するという流れになっています。
初期状態:山中を歩いている
↓
不幸状態:盗賊たちに襲われる
↓
幸福状態:独自開発した武器で盗賊たちの撃退に成功
このように、一話分の中に「初期状態→不幸状態→幸福状態」という起伏一セットが収まっています。
また、ベントが独自に開発した武器で爽快に無双する様子を描くことで、この作品が「ベントがオリジナル武器で無双する物語」だということを示しています。
物語の進行に合わせて起伏の振れ幅は大きく
「困難に陥る→乗り越える」を繰り返すことが物語の起伏になるわけですが、新たに訪れた困難が以前に乗り越えた困難よりたいしたことのないものだったら、読者の心はあまり動かせません。
「なんだ、これならさっき解決した問題のほうが難しかったから、今回も余裕でしょ」となってしまいます。
「今度の問題は解決が難しいぞ! どうやって乗り越えるんだ!?」と思ってもらうには、すでに乗り越えた困難よりも大きな困難を用意する必要があります。
これは絶対というわけではなく、クライマックス直前のどん底を際立たせるためにその直前の不幸状態を小さくするなどの工夫はOKです。
では『コクマヨ』の場合はどうなっているか見てみましょう。
(本作の「勇士」は、いわゆる「冒険者」を指します。)
不幸状態:盗賊たちに襲われる(※盗賊は雑魚敵)
↓
幸福状態:盗賊たちの撃退に成功
不幸状態:ギルド内最強の勇士であるジオスに不公平な条件の決闘を申し込まれる
↓
幸福状態:ジオスに勝利し、ギルドから追い出す
不幸状態:ジオスが大ギルドに入り、大勢の仲間を引き連れて報復しに来る
↓
幸福状態:返り討ちにし、全員を手駒にする
不幸状態:大ギルドのホームに行き、大勢に襲われる
↓
幸福状態:幹部3人を含め、全員返り討ちにする
起伏①~④を比べてみると、少しずつ敵の規模が大きくなっていることがわかりますね。
このあと、さらに第1章のクライマックスへと続きます。
クライマックス直前で主人公をどん底に落とし、起伏の振れ幅を最大に
クライマックスの直前では、主人公をこれまでで最も不幸な状態まで落とし、クライマックスで最高の状態まで押し上げます。
こうして幸福状態と不幸状態の振れ幅を最大にします。
それでは、『コクマヨ』で見てみましょう。
不幸状態:大ギルドのギルドマスターが超巨大な凶獣(怪物)とともに襲ってくる。主人公ベントは初めて苦戦。絶体絶命のピンチに。
↓
幸福状態:呼び寄せていた秘密兵器が間に合い、大逆転勝利。
いかがですか? 起伏⑤は起伏①~④に比べて最大の振れ幅になっていますね。
ここで『コクマヨ』の第1章は完結です。このあと第2章、第3章と続きますが、やはり話が進むにつれて戦いの規模は大きくなり、起伏の振れ幅もどんどん大きくなっていきます。
既出のイベントより大きいイベントを考えるのは大変そう……
イベントをリストアップして並べ替える形でプロットを作るといいよ。
まとめ
この記事では、小説のストーリーをおもしろくする方法として以下のことを解説しました。
- おもしろいストーリーの条件は「起伏をつける」こと
- 最初の一話は起伏一セットを入れ込んで作品紹介する
- 物語の進行に合わせて起伏の振れ幅を大きくする
- クライマックスで起伏の振れ幅を最大にする
起伏をつけることを意識するだけで、物語は格段におもしろくなります。ぜひここでの解説を参考にしてストーリーを考えてみてください。
「これで本当にストーリーがおもしろくなるの?」と思われる方は、今回引き合いに出した私の作品を読んで、本当におもしろいかどうか確かめてみてください。
『国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~』/「日和崎よしな」名義(リンクはカクヨム作品ページ)
先生、『コクマヨ』がおもしろいって自画自賛していることになりますけど、大丈夫ですか?
おもしろい自信はあるよ! 疑うなら読んでみて!