小説の物語作りに切っても切り離せないものとして、プロットがあります。
物語の筋、構想のこと。小説の設計図とも呼ばれる。
小説を執筆するにあたってプロットはとても重要な要素ですが、初心者には馴染みの薄いものです。
初めて小説を書く人が、「プロットなんて作る意味あるの?」、「プロットの作り方がわからない」と思うのは仕方のないことです。
そんな初心者のために、当記事ではプロットを作る意味と作り方を具体例を交えて解説します。
小説を書こうとしている人にはきっと役に立つはずなので、ぜひ当記事でプロットについての理解を深めてください。
- プロットを作る意味を知りたい
- プロットの作り方を知りたい
- プロットの具体例を見たい
プロットは必要? 作るメリットはある?
そもそもプロットは必要か
プロットは絶対に必要というわけではありませんが、後述のとおりメリットは大きいので作ったほうがいいです。
プロットをどれくらい作り込むかは人によって異なり、
- まったく作らない人
- 最低限の箇条書きで済ませる人
- もはや小説といえるくらいガッツリ作り込む人
と様々です。
まったく作らない人でも、たいていは脳内でなんとなくプロットが出来上がっているものです。
同一作者でも作品によってプロットの作り込みがぜんぜん違うということもあります。
プロットの作り方は必ずこうしなければならないという決まりはないので、自分に合ったスタイルを見つけましょう。
先生はどういうスタイルでプロットを作っていますか?
僕は最初に最低限の箇条書きを作って、小説本文を書きながらプロットの箇条書きを増やしていく感じで作っているよ。
プロットを作るメリット
プロットを作ることのメリットとしては、以下のことが挙げられます。
・物語の起伏を制御しやすい
おもしろい小説を書くには物語に起伏が必要です。書き終えてみたら「山場がなく平坦な物語だった」なんてことにならずに済みます。
・物語の軸や書きたいことがブレにくい
物語が脇道に逸れたり本筋から外れたりしても、プロットで定めた本筋に軌道修正できます。
・伏線を張りやすくなる
先の展開がわかっていれば、序盤から伏線を張りやすくなります。また、どのような伏線を張るかをメモしておけば、伏線の回収忘れを防ぐことができます。
・自分以外の人に共有、相談できる
編集者と連絡を取り合うプロの小説家の場合、プロットを見せて方向性の確認をすることができます。アマチュアでも、小説の方向性を他人に相談する場合に役に立ちます。
プロットを作るデメリットとしては物語の自由度が狭まるといったこともありますが、物語の展開を変えたくなったらプロットに縛られず自由に変えればいいので、プロット作りのデメリットを考える必要はありません。
プロットを作らずに後悔したことはありますか?
あるよ。書いたあとで「この話はいらなかったな」ってなったときはプロットの必要性を痛感したね。
プロットの形式
プロットの作り方に決まったルールはありませんが、参考として一般的なプロットの形式例を4種類紹介します。
それぞれの形式での具体例として、拙作『テレパシー・ブロッカー』でプロットを作ってみたので参考にしてみてください。
【プロットの形式①】箇条書き
物語上の主な出来事をひたすら箇条書きにします。
必ずしも時系列順に書く必要はなく、思いついた部分から書いていき、後から並べ替えても構いません。
- とある中学校の給食準備時間、相頭兄弟が二人のテレパシーを妨害するゲームを始める。
- 賞品は給食のプリン。プリン好きの早怜真実は参加を決意する。
- 相頭兄弟がトランプでデモンストレーションをおこなってからゲーム開始。
- 音賀那糸が音で妨害するも失敗。
- 黒居壁太が黒い下敷きで妨害するも失敗。
- 角里二世がカーディガンで相頭弟の視界を完全に遮るも失敗。
- 早怜真実が黒い下敷きを借り、壁太と違う使い方で妨害に成功。
- 相頭兄弟は鏡を仕込んでいた。それを見破った早怜真実は見事にプリンをゲット。
【プロットの形式②】起承転結ブロック
起承転結のブロックに分け、それぞれのあらすじを書きます。起承転結ではなく序破急や三幕構成でも構いません。
文字数に決まりはありませんが、目安が欲しい場合は合計800字程度を目指しましょう。
《起》 | とある中学校の給食準備時間に、相頭兄弟が二人のテレパシーを妨害できれば賞品として給食のプリンをあげると言い出し、教室にいた生徒たちが集まる。 |
《承》 | 相頭兄弟がテレパシーでトランプのマークと数字を当てるというデモンストレーションを披露する。ゲームが開始すると音賀那糸、黒居壁太、角里二世の順に挑戦する。それぞれ音による妨害、黒い下敷きを使った妨害、カーディガンを使った妨害をするも、全員失敗に終わる。 |
《転》 | 時間的に最後のチャンスというところで早怜真実が挑戦する。相頭兄弟は他の人から見えない位置に鏡を仕込んでいたが、早怜は黒い下敷きで鏡を見えなくしてテレパシーの妨害に成功する。 |
《結》 | トリックを見破った早怜はクラスメイトから賞賛され、賞品のプリンもゲットする。 |
【プロットの形式③】小説体
長編のストーリーを短くまとめた短編小説のような文章として書きます。
文字数は自由ですが、800字程度で書けば公募用の「あらすじ」に転用しやすくなります。
とある中学校の給食準備時間中のこと。相頭兄弟が二人のテレパシーを妨害するゲームを始めた。賞品は給食のプリン。教室にいた生徒たちが集まり、プリンに目がない早怜真実も参戦を決意する。
相頭兄弟がテレパシーでトランプのマークと数字を当てるというデモンストレーションを披露したのち、ゲームが開始した。音賀那糸、黒居壁太、角里二世が挑戦し、それぞれ音による妨害、黒い下敷きを使った妨害、カーディガンを使った妨害を試したものの、全員失敗に終わる。
時間的に最後のチャンスというところで早怜真実が挑戦する。相頭兄弟は他の人から見えない位置に鏡を仕込んでいたが、早怜は黒い下敷きで鏡を見えなくしてテレパシーの妨害に成功し、クラスメイトからの賞賛と賞品のプリンを得たのだった。
【プロットの形式④】シーンごとの5W1H
シーンごとに細かく5W1Hを埋めます。
When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)
必要ない項目は省略しても構いません。また、プロットに書いた内容を必ずしも小説本文に書く必要はありません。
《シーン1》
いつ | 給食準備時間中 |
どこで | とある中学校の教室 |
誰が | 相頭兄弟 |
何を | テレパシーを妨害するゲームを始める |
なぜ | テレパシーのトリックを見破られない自信があるから |
どのように | デモンストレーションをして参加者を募る |
《シーン2》※「いつ」と「どこで」は固定なので省略。
誰が | 音賀那糸 |
何を | 黒い下敷きを使う |
なぜ | 視線か何かで合図を送っていると考えたから |
どのように | 兄弟の顔の間に壁を作って視線をさえぎる |
《シーン3》
以降、同様にシーンごとに5W1Hを埋めていく。
例では《シーン3》以降は省略しました。
このやり方は非常に細かいので、プロットというより脚本の作成手法である「ハコ書き」に近いものになります。
この4つ以外のやり方でプロットを作ってもいいですか?
執筆する自分のためのメモだから、好きなように作って構わないよ。
ストーリーの構成方法
ストーリーの構成方法は別記事「初心者が小説を書くための6つの手順」のプロットの項目で記述したとおりですが、ここではもう少し深掘りします。
プロローグ
単純に「物語の導入」の一部としても構いませんが、せっかく第一話の前に特殊な枠を設置するので、その小説の見所となるシーンを入れ、読者にインパクトを与えましょう。
特にWeb小説の場合は最初の一話だけを見てその作品を読むか決める人も多くいます。そういった人たちを逃がさないよう、ここでしっかりと作品の魅力を出しましょう。
《起》物語の導入
クライマックスに向かうためのキッカケの出来事を書きます。また、世界観の説明や登場人物の紹介をします。
甲子園を目指して野球部に入ろうと思ったら廃部になっていたので、新たに野球部を立ち上げる。
《承》クライマックスに至るまでの過程
クライマックスにたどり着くための地道な努力などを書きます。
特に長編の場合はこの部分が非常に長くなり、ダレる原因にもなります。適度に物語の起伏を作って読者を飽きさせないようにしましょう。
主人公を上げて落としてというのを繰り返し、クライマックス直前で大きく落とすと効果的です。
野球部員を集める。バイトをして道具の購入費用を稼ぐ。道具をそろえて練習する。練習試合を組む。学業成績が悪く部活禁止令になりかける。試合前にケガをする。
上記の例でいうと、プロローグには練習試合での白熱シーンを抜粋するのがいいと思います。
時系列が追いついたらプロローグで使った試合は回想という形でサラッと流したほうがいいですが、それだと山場を一つ削ってしまうので、練習試合を2つ組むなどして再び白熱する練習試合を書くといった工夫をしましょう。
《転》クライマックス
主人公のストーリー上の目標となる部分を書きます。
読者はこの部分を楽しみに作品を読み続けてきたはずなので、読者の期待に応えるべく作品内で最も盛り上がる展開を書きましょう。
ついに念願の甲子園に出場!
上記の例でどういう展開にするのかは作者しだいです。
甲子園で優勝するのであれば、準決勝までは《承》の部分で決勝戦が《転》ということになります。
甲子園で初戦敗退するにしろ決勝戦までいくにしろ、クライマックスで戦う相手は因縁の相手だとか常勝無敗の最強チームなど、読者を惹きつける設定にすべきです。
《結》エピローグ
クライマックスの後、どうなったかの結末を書きます。
読者が読みたいのはクライマックスの部分ですが、そこで終わると投げっぱなしになってしまいます。
目標を達成したとしても主人公の人生は続きます。それがどういったものかという方向性を示しましょう。
・甲子園では初戦敗退したけど来年は優勝することを決意する。
・甲子園で優勝し、仲間との別れを惜しみながら学校を卒業していく。
以上のプロローグ~エピローグの内容を考える順番は自由ですが、《転》→《起》→《承》→プロローグ→《結》の順に作っていくのがオススメです。
先生はハードモードで書いたことはありますか?
あるよ。Web投稿サイトに投稿した『残念ながら主人公はゲスでした。』のラスボスは、人間、物体、時間を自在に操作できて鋼鉄以上に強い肉体を持たせたから、倒し方にすごく悩んだよ。
まとめ
当記事ではプロットに関して以下のことを解説しました。
- プロットを作る必要性とメリット
- プロットの形式①:箇条書き
- プロットの形式②:起承転結ブロック
- プロットの形式③:小説体
- プロットの形式④:シーンごとの5W1H
- ストーリーの構成方法
小説の物語は必ずしもプロットどおりに書かなければならないわけではありません。話の方向性を変えたくなったら変えてもいいのです。
一番避けるべきことは、プロット作りでつまずいて小説本文がいつまで経っても書けないということです。
プロットは小説を書きながら作り込んでいっても構いません。
小説を書くときには、執筆のツールとしてプロットを役立てましょう。
プロットを作ったら小説を書かずに満足しちゃいそうです。
それはプロットを緻密に作り込んだ際に陥りがちな罠だから気をつけてね。